求人票に書いてはいけない項目一覧 ― 職業安定法・男女雇用機会均等法の基本
求人票を作成していて、「この書き方は法律に触れないだろうか」と手が止まった経験はないでしょうか。採用担当者が専任でいない中小企業では、チェックを一人で最終判断せざるを得ない場面も多く、不適切な表現のまま公開してしまうリスクが常にあります。
本記事では、職業安定法・男女雇用機会均等法などに基づき求人票で避けるべき表現を整理したうえで、違法ではないが誤解を招きやすい表現、必須記載事項の抜け漏れチェック、媒体ごとのルールの違いを解説します。なお法令の解釈や運用は改正で変わるため、最終判断は必ず厚生労働省やハローワークインターネットサービス等の公式情報でご確認ください。
法律で禁止されている表現(性別・年齢・国籍等の限定表現)
求人票における表現の制限は、主に次の法令に基づいています。
性別を理由とした限定表現
男女雇用機会均等法により、募集・採用において性別を理由に対象を限定することは原則として禁止されています。「女性限定」「男性歓迎」といった直接的な表現はもちろん、「主婦(夫)歓迎」のように一方の性を暗に想定させる表現も注意が必要です。例外は、防犯上の理由で男性に限定される警備業務など、業務の性質上どうしても一方の性でなければ遂行できない、ごく限られた職務のみです。「なんとなく向いていそうだから」という理由での限定は認められません。
年齢を理由とした限定表現
労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)に基づき、募集・採用における年齢制限も原則として禁止されています。「35歳以下」「40歳まで」のような直接的な年齢指定はもちろん、「若手が中心の職場です」といった表現も、実質的に年齢を限定していると受け取られるおそれがあります。
一方で、例外的に年齢制限が認められるケースもあります。長期のキャリア形成を目的に一定年齢未満の労働者を対象とする場合や、技能・ノウハウの継承のため特定の年齢層を対象とする場合、深夜業のように他の法令上の理由がある場合などです。ただし、該当するかどうかの判断には専門的な確認が必要です。自己判断で決めつけず、募集要項に例外事由を明記したうえで、必要であればハローワークや社会保険労務士に確認することをおすすめします。
国籍・信条・社会的身分による限定
職業安定法は、求人の申込みを受理する職業紹介事業者等に対し、国籍・信条・社会的身分等を理由とした差別的取扱いを禁止する趣旨の規定を置いています。「日本国籍の方のみ」といった表現も、業務上の必然性(在留資格の制約等の客観的理由)が説明できない限り避けるべきです。
この分野は改正や運用変更が比較的頻繁です。個別の適法性の判断は、厚生労働省や都道府県労働局・ハローワークの公式情報、必要に応じて社会保険労務士への相談で確認してください。
「アットホームな職場」等、記載自体はOKだが誤解を招く表現の注意点
法律で明確に禁止されているわけではないものの、実態とのギャップから求職者とのトラブルや早期離職の原因になりやすい表現もあります。
根拠のない抽象表現
「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」といった表現自体は違法ではありませんが、具体的な根拠を伴わないまま多用すると、求職者が入社後の実態をイメージできず、ミスマッチの温床になります。人材紹介各社の採用ノウハウでも、こうした抽象表現は応募の後押しになりにくいとしばしば指摘されます。「アットホーム」だと感じる理由(社員数・年齢構成・社内イベントの頻度など)を添えるほうが、誤解を防ぎながら魅力も伝わります。
間接的に年齢・性別を示唆する表現
「若手が活躍中の職場です」「女性が多く働きやすい環境です」は、書き手に差別の意図がなくても、実質的に特定の年齢層・性別を想定させる表現として問題視されることがあります。前章の禁止表現との境界が曖昧になりやすいため、「特定の属性を排除するように読めないか」という視点で見直しましょう。
「経験不問」と「実際は経験者しか採用しない」の乖離
求人票には「未経験歓迎」と書きながら、実際の選考では経験者しか採用しない運用になっているケースも見られます。法令違反には当たらなくても、応募者との信頼関係を損ない、評判低下につながりかねません。記載内容と実際の採用基準は一致させておきましょう。
必須記載事項の抜け漏れチェックリスト
禁止表現を避けるだけでなく、明示が義務付けられている項目の漏れも重要な確認ポイントです。職業安定法に基づき、募集の際に明示が求められる代表的な労働条件は次のとおりです。
- 業務内容(仕事の内容)
- 契約期間・試用期間の有無
- 就業場所
- 就業時間・休憩時間・時間外労働の有無
- 休日・休暇
- 賃金(基本給・諸手当・賞与の有無など)
- 加入保険(雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金)
- 受動喫煙防止のための措置
- 募集者(会社)の名称・所在地
さらに、2024年4月の職業安定法施行規則改正により、次の3点が新たに明示すべき事項として追加されています。
- 従事すべき業務の変更の範囲(将来的な担当業務の変更可能性)
- 就業の場所の変更の範囲(将来的な転勤・配置転換の可能性)
- 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間や更新回数の上限の有無を含む)
これらは「入社時点の内容だけ書けばよい」項目ではなく、将来変わる可能性がある範囲まで含めて明示することが求められています。制度の詳細は今後も見直される可能性があるため、最新の様式・記載方法は厚生労働省やハローワークインターネットサービスの公式情報を確認してください。
この一覧と照らして空欄や記載漏れがないかを確認するだけでも、行政指導のリスクを大きく減らせます。とはいえ、禁止表現の有無と必須項目の抜け漏れを毎回手作業で照合するのは、担当者一人には負担の大きい作業です。こうした確認を自動化する目的で、私たちは求人票の文章を貼り付けるだけでNG表現や記載漏れの可能性を指摘する「求人チェッカー」を開発しています。現在は正式リリースに向けた事前登録の受付段階で、導入企業による実績はまだありませんが、無料診断の形で提供する予定です。詳細は求人チェッカーの製品ページをご覧ください。
媒体ごとのガイドライン差(ハローワーク/Indeed/Airワーク)
法律上の禁止事項をクリアしていても、掲載先の媒体ごとに独自の掲載ガイドラインが設けられている場合があり、両方を満たす必要があります。
ハローワーク
ハローワークでは、職業安定法に基づき求人内容の審査が行われます。禁止表現や必須項目の不足があれば、受理の段階で修正を求められることがあり、記載ルールへの準拠が比較的厳格に確認される媒体です。
Indeed
Indeedは求人情報を集約するプラットフォームとして、差別的・誤解を招く表現に関する独自のコンテンツポリシーを設けています。法律上問題がなくても、Indeed側の基準に抵触すれば掲載が却下・非表示になることがあります。詳細は掲載前にIndeedの公式ヘルプで確認してください。
Airワークなどその他媒体
Airワークや求人ボックスといった他の求人媒体でも、それぞれ利用規約や掲載ガイドラインが定められています。ハローワーク向けの原稿をそのまま転用する際は、各媒体の規約に照らして表現を見直す必要があります。
「法律違反がないか」と「媒体規約違反がないか」は別の確認軸です。片方だけで安心すると思わぬところで掲載を止められるため、両方の観点でチェックしましょう。
チェックリストで自社の求人票を確認する
ここまで見てきた内容を、最後に簡単なチェックリストとしてまとめます。
- 性別・年齢・国籍等を直接的または間接的に限定する表現が含まれていないか
- 「アットホーム」「やりがい」などの抽象表現に、具体的な根拠が添えられているか
- 記載内容と実際の採用基準・労働条件が一致しているか
- 業務内容・契約期間・就業場所・賃金・労働時間・休日・保険加入など、必須項目に抜け漏れがないか
- 2024年4月改正で追加された「業務・就業場所の変更範囲」「有期契約の更新基準」が明示されているか
- 掲載予定の媒体(ハローワーク/Indeed/Airワーク等)独自のガイドラインにも違反していないか
求人票の禁止表現や必須記載事項は、法改正のたびに更新される可能性がある分野です。チェックリストを作って終わりにするのではなく、求人を出すたびに最新の公式情報と照らし合わせる習慣を持つことが、行政指導や掲載却下のリスクを避ける一番確実な方法です。
毎回この照合作業を自分たちだけで行うのが難しい場合は、確認を自動化するサービスを活用するのも一つの選択肢です。私たちが現在事前登録を受け付けている「求人チェッカー」も、その一つとして開発を進めています。次に求人を出し直すタイミングで、求人チェッカーの製品ページを一度ご覧いただければと思います。
まとめ
求人票に書いてはいけない項目は、大きく分けて「法律で明確に禁止されている表現」と「違法ではないが誤解を招きやすい表現」の二種類です。性別・年齢・国籍等を限定する表現は避け、抽象的な表現には具体的な根拠を添える。そのうえで必須記載事項の抜け漏れを確認し、掲載予定の媒体ごとのガイドラインにも目を通す。この確認を求人を出すたびに行うことが、トラブルを未然に防ぐ最も確実な方法です。
法令や媒体ガイドラインは今後も改正・更新される可能性があります。本記事を出発点としつつ、実際の掲載前には厚生労働省やハローワーク、各媒体の公式情報で最新の基準を確認したうえで、自社の求人票を見直してみてください。